天使のお便り 翼の国へ


天使のお便り 翼の国へ 第4回 「版画への取り組み」

前回までのお話で作家としてのスタイルを確立し画集という形で発表の場を持ったことをお話しました。
しかし、画集には問題点がありました。それは、まず印刷技術の限界により、きたの作品の持つ微妙な色が 表現再現できないこと、そして装丁の過程で、見開きの2面となり作品が分断されてしますケースがあること。
確かに手軽ではあるのですが、ゆっくり鑑賞する作品として飾ることができないこと、また時間とともに色が 退色するという問題もありました。

これらの課題をクリアするため、きたの先生は自らの作品を版画というかたちで発表することにしました。 現在も継続しているものです。

現在の販社から版画を出すまでにも版画に挑戦されたことはあったそうですが、技術的な問題から納得のいく クオリティの作品にはならなかったようです。
その突破口となったのがジグレという技術です。この技術は原画をコンピュータで解析し細かな点の色を数値に変換し それを高性能のプリンターで再現するというもので、現在では家庭用のパソコンでもスキャナとインクジェットの プリンターで同様のことができますが、その技術のプロバージョンともいえる技術です。

このジグレを使って、 これまでの代表作の多くが版画作品として世に出ることになりました。<br>版画の利点は、作品として納得のいく色彩に なること、出来上がった版画は退色につよく、普通の室内の環境であれば50年以上退色がないこと、そして観賞用の作品 として額にいれて飾ることが可能となったことです

実はきたの先生の作品の原画はご存知のとおり水彩色鉛筆で 描かれているため、原画はとてもデリケートで扱いがむずかしく、湿度に敏感で湿気があると色が水分でにじんだり、 強い光で退色していますという問題があります。これはパステルで描かれた美術作品でも展示する際照明をすごく弱く
しているのを見たひとがいるかもしれませんが、これも退色を防止するためのものです。
そして、原画はとても小さなものが多く、飾るには小さいとい点もありました。そのため版画では原画のサイズを 拡大したものが多数あります。

このようにして、美術作品として作品を発表する場を持つことができるようになり、作品を画集とは違った形でファンに 届けることが可能になったわけです

でも、きたの先生はこれで満足したわけではありません。すぐれた技術であるジグレだったわけですが、 やはり作品を拡大するため近寄ると荒さが目立つなどの欠点もあります。
そこで最初から版画になることを前提に色調を計算したり、色を重ねる回数を調整したり工夫を重ねます。そして、 あらたにリトグラフで作品製作をはじめました。これには優れた印刷工房の職人技が欠かせないもので、原画を描くのにも 使用しているのと同じ「BBケント」という紙も使用可能になりました。 きたの先生の微妙な色を再現するため、20回以上も色を重ねて製作するそうです。

こうして、画集、版画と発表の場を広げたわけですが、新たな問題も生じました。それは画集にくらべ高価だということです。 そのため、ファンであってもそうそう版画を入手するとはいかなくなったこと、特に学生さんには高値の花となってしまいました。

そこで、最新の技術をつかい版画と遜色ないものをということで生まれたのが画集「翼の国へ」でした。そして手軽でプレゼント にもの使える「セラフィム」「シルフィード」「セレスティアル」「フェアリーガーデン」ミニブックシリーズ。パソコンで作品を 楽しめるCD-ROMの発売、そして2004年、贅をつくした豪華画集「きたのじゅんこ自選画集」<br>の出版へと広がっていきます。

以上4回に渡って、きたのじゅんこ先生のこれまでの歩みを駆け足で見てきました。次回からは、より作品の深い世界について考えて 行きたいと思います。

参考文献 Webサイト ジェイプリント http://www.artgallery.co.jp/prints/ 

2005/08/27



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