天使のお便り 翼の国へ


天使のお便り 翼の国へ 第7回 「無垢なものたちへ」

今回のテーマは「無垢なものたちへ」です。

このテーマを正面から打ち出した画集があるわけではありませんしかし、きたの先生の絵について話をしたいと思ったとき自然にでてきたテーマだったのです。 きたの先生の作品には、子供、少年少女、小鳥や馬が登場します。

特に、その登場人物の表情そのなかでも素直ですこし憂いのある視線に魅力を感じる方は多いかと思います。 私も「悲しがる君に」の中の彼女の表情に魅せられて現在に至った一人です。

画集「予感」のなかで、鳥がとても好きでとありますし、画集「夢の中へ」のなかでは、気を失ったしじゅうからを世話して、 元気に森にもどしてあげたエピソードが記されています。また、画集「月の雫」では森を散歩中にであった子供たちが、 個性豊かに森の恵みを拾い集めている様子にあたたかなまなざしを感じます。

またCD-ROM きたのじゅんこ作品集の作品解説「大地の青い星」のなかで道端に咲く「オオイヌフグリ」という小さな花に、 春の訪れを感じる、そして子供の低い視線がそんな営みを見つめていると、語っています。
私たちは毎日時間に追われ、ものの値段や、社会的な成功のための競争社会のなかにいます。そして年中かわらない快適な生活を しています。しかし、そのため自然を忘れ、季節感も商店のセールで知るという有様でし、子供ですら学校では他人の評価を気に してすごすような世の中になってしまいました。

しかし、日本人は伝統的に短歌の季語に代表されるように、自然に親しみその微妙な変化を繊細で豊かな言葉で表現してきたのです。 自然は時に厳しく人に試練を与えますが、自然に対し畏敬と感謝の気持ちで接するものには恵みを与えてくれるものでもあります。 そして自然や生き物の声に素直に耳を澄ませれば会話ができるものなのです。そう、子供は動物も人間も同じと感じてますよね。

きたの先生の絵に登場する子供や少年少女はまさに、私たちを見つめ守り語りかけてくる自然が人の姿を借りて現れたものなの かもしれません。だからこそ、そのまなざしには、人を疑うことしない無垢なそれでいて母親のようなやさしさがあるのでしょう。

人物を描くと描いた本人に似るという傾向があります。また、人物を描くと描いた人のそのときの精神状態がにじみ出るといいます。 丁寧に色鉛筆で色を重ねる作業をしているとき、作品に登場する人物と同じまなざしで世界を感じながら描いていると思えてならないのです。 だからこそ、作品を通して見るものもそれに呼応する、大切な思いを感じることができるだと思います。

この自然に対する思いが妖精や天使となり、そしてケルトとの出会いへとつながっていきます。

2005/09/17



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